男なら好きじゃない人はいないであろう野郎マンガ「バキシリーズ」の『刃牙道』という作品について解説をしながら語っていく。実は筆者は「バキシリーズ」の中でもこの『刃牙道』というシリーズが一番好きである。それはなんといっても伝説の剣豪「宮本武蔵」が今回の主役だからだ。
ここで「バキシリーズ」を読んだことがない人のために読む順番を表すと
『グラップラー刃牙』→『バキ』→『範馬刃牙』→『刃牙道』→『バキ道』
となっている。他にもスピンオフ作品である外伝漫画がいくつか存在するが、大きな流れとしては上の通りだ。もちろん今回解説する単体の『刃牙道』だけでも楽しむことはできるが是非彼らの出会いや戦い、ストーリーから楽しみたい方は『グラップラー刃牙』から順に読んでいくことをお勧めする。
『刃牙道』に繋がる『範馬刃牙』の流れ
『刃牙道』の物語は史上最大の「親子喧嘩」範馬刃牙vs範馬勇次郎の戦いの後から始まる。
そもそも、「バキシリーズ」は子である範馬刃牙が母親を殺した父の範馬勇次郎を倒すために鍛えたり、戦ったり、その戦いを通じで友情を築いていく漫画だった。そのため、範馬勇次郎を倒すことがこの「バキシリーズ」の究極の目的だったのだ。実際、バキはこう語っている。
「親父がもし地上最弱の生物なら 俺は二番目に弱い生物でいい」
実際はその親父である範馬勇次郎は地上最強の生物と言われているほどめちゃくちゃ強いのでバキも死ぬほど鍛えてるんですがね。とはいえ、その究極の目的ともいえる史上最強の「親子喧嘩」が繰り広げられ『範馬刃牙』で最高のラストを迎えた後の作品であることを押さえておきたい。実際に、当時の読者は『範馬刃牙』でシリーズが終了すると思っていた。
現代に蘇った最強の剣豪「宮本武蔵」
さて、そんな「親子喧嘩」を目撃してしまった格闘家たちは日常に飽き飽きしていた。それもそのはず、地上最強の生物である範馬勇次郎とその男を倒してしまった範馬刃牙との戦いを見てしまった後ではどんな日常も霞んでしまう。
そんなとき、御老公こと徳川がクローン技術を駆使して現代にあの「宮本武蔵」を蘇らせてしまった。ここでの徳川の姉・徳川寒子の何とも言えないビジュアルなどはぜひ本編で見ていただくとして、宮本武蔵がハンパなく強く現代の格闘家が苦戦を強いられるところは見ものだ。
「最強という言葉はあの人から始まった」
嘘か真かわからないが、その言葉に信ぴょう性を帯びるくらい宮本武蔵はとんでもなく強い。宮本武蔵は「二天一流」という剣術の流祖であるだけあって、刀を使って戦うのだが、徒手(=素手)の宮本武蔵も現代の格闘家を翻弄するほど圧倒的に強いのである。
烈海王 死す
ネタバレもいいところだが、バキシリーズにおいてもかなりの人気を誇る烈海王がなんと対武蔵戦で命を落とすことになる。
バキシリーズは、たとえば愚地独歩の片目が潰れたり、烈海王の足が食われたり、愚地克巳の腕が食われたりと、身体的損傷をすることはままあったが命を落とすことはなかった。そこがバキシリーズの良さでもあるし、まあ悪く言えば甘さというかプロレス的に見えるところでもあるのだが今回は違った。
相手は戦えばどちらかが死ぬまで終われない戦国の時代に生きた伝説の剣豪・宮本武蔵であるし、烈海王自身も武蔵が真剣を使うことをこだわった。もちろん、烈も武具や消力(シャオリー)などの技術も惜しまず使った。
こうした地下格闘場では異例の武器の使用が許された試合であったが、結果は烈海王の死をもってその幕が閉じられた。烈海王はかなりの人気キャラではあったしまさかここにきて主要キャラが死ぬことになるとは正直驚きが隠せなかった。今までのバキシリーズとは一線を画する衝撃を与えた。
モブキャラ本部以蔵の大活躍、そして勝利
そしてなんと、ここにきて今までモブキャラとしてその存在が見え隠れしていた本部以蔵が覚醒する。本部は実戦格闘術という徒手が戦いの基本である現代には無駄であった武芸百般を極めていた。ただ、こと地下格闘技場などの試合においては徒手対徒手が基本であるため日の目を見ない日が続いた。
それが、ここにきての宮本武蔵である。つまり、本部が学び、そして完成を目指した究極体ともいえる武蔵から現代の格闘家を護ると、あの時代の戦い方に精通しているのは自分だけだと自負し大活躍をする。
実際に、武蔵vs本部ではかなり健闘して、最後は武蔵に対して決死のチョークスリーパーをして武蔵を失神に追い込み勝利している。そう、まさかまさかの本当にみんなを護ってしまったのだ。この戦いでの本部は本当にかっこよく今まで本部を侮っていた人は是非見てほしい。
(ここは『刃牙道』の中でも最高にかっこいい戦闘シーンです。漫画では14,15巻あたりです)
そしてあの世に還る宮本武蔵
武蔵vs本部の戦いの後、バキは宮本武蔵を葬ると宣言。勝つではなく葬る。バキらしくない言葉に周囲は驚くが、バキは明確な意図があった。それは武蔵が現代で「孤独」であるということ。
現代の格闘家は戦いを通じて繋がっているが、いきなり400年後にタイムスリップした武蔵は孤高の武士であるだけではなく「孤独」であると。そのことに気づいたバキは武蔵を現代に居させるのは酷な話だと思い、きちんと葬り去ってあげようとする。
場所はもちろん地下闘技場、バキと武蔵が熱い戦いをしている最中、武蔵を降霊したのと同じやり方で徳川寒子が武蔵の霊をあの世に還すことでまさかのエンディングを迎える。
なんとも消化不良な終わり方ではあるが、なんと宮本武蔵の身体は液体窒素などにより-196度に保存されることになる。これは今後なにかありそうだなというバリバリの伏線を残して宮本武蔵篇とも呼べる『刃牙道』がここで締めくくられる。
そして、物語は古代相撲・野見宿禰(のみのすくね)篇、『バキ道』へと繋がっていくのだ。
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いかがだっただろうか。これが『刃牙道』のざっくりとした内容だ。読み返してみて、なにがこんなに好きなのだろうかと考えてみると、やはり日本人が大好きな宮本武蔵をメインキャラに据えたことや、烈海王が死んでしまうなどのドラマチックな展開だろう。
バキシリーズは間違えなく「親子喧嘩」が一つのピークだったが、それとは別の魅力を魅せてくれたのが『刃牙道』だ。ぜひ読んでもらいたい。