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後味最悪だがどこか考えせられる『犬・犬・犬』

犬・犬・犬 (ドッグ・ドッグ・ドッグ)

珍しいタイトルだが読み方は「ドッグ・ドッグ・ドッグ」である。

主人公の伊達賢と彼に関わる人間ドラマを描いた全5巻の漫画である。

ドロドロ系の漫画を探していた時に見つけた一冊だが、とても衝撃的な作品だったので紹介したいと思う。

マヒケン

主人公の男・伊達賢はみんなから「マヒケン」というあだ名で呼ばれている。由来は「麻痺してる賢ちゃん」だ。

何が麻痺しているかというと見た目は優男にも関わらず、実際は眉一つ動かさず人を殺す異常者というところだ。事実、マヒケンは小学生の時に実の両親を殺し、作中でも見知らぬ女性を平気で殺し、その死体を野犬に食べさせている。

こうしたサイコパス性を抱えたマヒケンが周囲の人との関わりの中から自己を取り戻していくストーリーだ。

絵を描くことで世界を知り自分を知る

同僚の絵描きである道男から絵を教わり、絵を描くことで自分の中にある何かを次第に見つけていこうとするマヒケン。

自分の彼女である佐和子をヌードモデルとしてデッサンをしていくが、マヒケンは自分彼女の裸体を他人である道男に見られる事は当然の如く気にしないし、道男と佐和子が肉体関係を持ったとしても全く意に返さない。

マヒケンはただ絵を描くのだ。

思慮に富む組長

マヒケンを可愛がりつつも腫れ物の様に扱う組長という男が出てくるのだが、この組長がなかなか考えさせられることを言うのでこの漫画の深さが一気に増している。

ヤクザの組長だけあって人身掌握に優れているのだが、上に立つ者は思慮の深さも大切なのだと思い知らされる。

個人的に一番好きなキャラクターなのでネタバレしないようにここで紹介しておいた。ぜひ組長に注目して読んでもらいたい。

痛みも感じず色もわからない

マヒケンの異常性はその人間的な感情の無さから汲み取る事ができるが、それは恐らくマヒケンが痛みも感じず色もわからないことに起因するのだろう。

道男が、実は哺乳類のほとんどは色がわからないと作中で語っているが、マヒケンはまさに動物的に動いているのだと考えればその行動原理に納得がいく。

タイトルやマヒケンの名前から犬=動物を表しているのだろうが、実際にこういった動物的=理性的でない人間が居れば組長のように腫れ物に触るように対応するのも納得がいく。

後味の悪いバッドエンド

道男と佐和子は次第に恋仲となるがマヒケンとの関係は切らず、むしろマヒケンの親代わりになろうとする。

マヒケンは両親がいるからと両親と住んでいた廃墟同然の家に毎日帰るが、二人はそこからマヒケンを解放させようと行動するが・・・

これ以上はネタバレになってしまうから書くことを控えるが本当に救いようのないラストだ。

ドロドロ系が好きな人はもちろん、人間とは何かを考えたい人にもおすすめの一冊だ。